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  • Writer's picture蒼井

蒼井のミックス講座〜歌ってみた篇〜

今回は僕がいつもやっているミックスの手法についてざっくりとではありますが書いていきたいと思います。

想定としては、YouTubeやニコニコ動画、Twitterなどへ投稿するためのいわゆる「歌ってみた動画」のミックスです。

「歌とカラオケ音源とDAWはあるけどミックスってよくわからん!」って人向けです。


使用するパソコン(OS)やDAWソフト・プラグイン(エフェクトのこと)によって作業環境は違うと思いますので、基本的な部分のみに絞り紹介したいと思います。


まず大まかな流れから。


1.コンプレッサーで音量を整える

2.EQ(イコライザー)で音の質感を整える・周波数帯域を整理する

3.リバーブやディレイなどの空間系エフェクトでオケと馴染ませる


ものすごくざっくり言うとこんな感じです。

もちろんミックスに慣れてきたり、できることが増えていくとどんどん枝分かれしていきます。

なので最初の認識としてこれくらいでまずは大丈夫です。


では実際にミックス画面を参照しながら説明していきます。

まずは音源が並んでいる状態。ここがスタートラインです。


カラオケ(青)とボーカル(赤)


まずカラオケ音源を並べたときに気にするのが何を置いてもボリュームです。

たぶんほとんどのカラオケ音源はでかいと思います。

本当はメーターを見ながらバランスをとるのが好ましいですが、「そんなものあってもわからない!」って人はとりあえず大丈夫です。


ボーカルトラックの音量に合わせてオケのボリュームを下げてください。ここで大事なのが、「ボーカルがちゃんと聴こえてオケも大きくなくてちょうどいいポイント」を見つけることです。(前提としてボーカルの録音レベルが小さすぎないこと)


そして自分のモニターの音量もここで決めてしまいます。ヘッドホンを使っている場合はバランスよく聴こえるようにヘッドホンのボリュームを上げておきます。小さい音量でやるよりできるだけ大きい音量のほうがいいと思います。(耳を痛めない程度に!)

モニターのボリュームを決めてしまったらミックスの終盤まで基本的には触りません


それではモニターの調整が済んだらミックス作業に入ります。

今の時点では「サビはちょうどいいけどAメロBメロが小さい・・・」と感じるかもしれません。なのでまずは音量差をなくしていきます。


1.コンプレッサーで音量を整える

コンプレッサーを使って何をするか?それは「大きい部分を抑えて、小さい部分を上げる」です。

そうすることで相対的に音量差がなくなります。サビの大きいところを少しだけ下げ、メロ部分は大きくなり、全体を通して聴くと音量のばらつきがなくなり聴きやすくなる、ってことですね。

これが基本的なコンプレッサーの考え方です。


コンプレッサー(Waves C1 Compressor)の例

いくつか数値が出てきました。最初はわかりにくいと思うかもですが、「このパラメーターは何の数値で値を変えるとどういう音になる」というのを意識してやってみてください。


押さえておきたいポイントは、

●Threshold:コンプレッサーがかかり始める値

●Ratio:音量を下げる比率

●Attack:コンプレッサーがかかるまでの時間(Ratioで設定した値に到達するまでの時間)

●Release:コンプレッサーがかかり終わるまでの時間(Thresholdを下回ってからコンプが解除されるまでの時間)

●Makeup:Gainのこと(ボリューム)

●左の赤いメーター部分(ゲインリダクションといいます)


こんなところです。

AttackとReleaseに関してはプラグインによって数値も違うので、最大値と最小値を把握しておいて、「ツマミでいうと何時くらい」というのを理解しておきましょう。


自分の場合、ボーカルにおける基本の設定は

Ratioは3~4:1、Attackは少し遅め、Releaseは中間〜少し早め

から始めて聴きながら調整していきます。(Attackは音源によって少し早めもありです)

Thresholdはボーカルトラックの音量によって変わるのでこれも聴きながら調整していきます。ゲインリダクションのメーターを見ながら、サビ部分で大体-3dB~-6dBくらいリダクションされるのを目安に調整します。

その後、Makeupでメロ部分を聴きながら上げていき、サビのリダクション量を大きく超えない程度に調整します。


ここまでできれば、最初のときよりもかなり聴きやすくなってると思います。コンプレッサーの処理の基本はこんな感じです。


補足として、ボーカルの歯擦音はディエッサーというプラグインを使って処理します。簡単に言うと周波数を指定してかけるコンプレッサーみたいなものです。

4kHz~5kHzくらいの間で耳に痛い箇所を探し、リダクションされることで聴こえがよくなるポイントを探します。

持っている方は参考にしてみてください。


ディエッサー(Waves DeEsser)の例


2.EQ(イコライザー)で音の質感を整える・周波数帯域を整理する

次にEQを使っていきます。ここでの目的は「不要な周波数をカットし、聴かせたい部分を強調し抜けのいい音にする」です。

EQもコンプと同様様々なプラグインが存在します。最初はまず「パラメトリックイコライザー」という、周波数を自由に設定できるタイプのものをおすすめします。


EQ(Avid EQ3 7-Band)の例

これもコンプ以上に使用する音源によるので、基本的な項目を押さえたら聴きながら調整してみてください。


自分のボーカルの処理ですが、まずローカット(ハイパスフィルターともいいます=HPF)を80~100Hzくらいのところで設定します。

あとは慣れというか、「この辺を抑えたい」という判断がやりながらわかってきたり気付けたりすると思うので、まずはローカットだけでも大丈夫だったりします。


いちおう自分の手法は、250Hzあたりと、600~700Hz近辺のもこっとした部分はとるようにしてます。

抜けをよくするために別のプラグインで3~5kHzや16kHzのあたりも少し上げたりもします。この辺はオケとの混ざりも関わってくるのでこれも聴きながらいいと思えるポイントを探ってみてください。


これは経験談ですが、最初のうちは過剰に処理してしまいがちなので、あくまで客観的に聴いて本当に必要な処理か・オケとの距離感がでないか(※1)・高域を上げすぎて聴いてる人の耳が痛くならないか、心がけておくといい結果になるかもしれません。

(※1 たとえば静かなピアノバラードなのにバキバキのボーカルになってないか...など)


3.リバーブやディレイなどの空間系エフェクトでオケと馴染ませる

ここまでボーカルの処理ができたので、音量バランスもとれて音の質感も整ったトラックになったかと思います。

あとはリバーブやディレイなどの空間系エフェクトでオケと馴染ませていきます。


リバーブ(Waves H-Reverb)の例

ディレイ(Avid Mod Delay Ⅲ)の例


ここで空間系プラグインのかけ方のセオリーとして、「インサートではなくAUXトラックにセンドで送る」というものがあります。(AUXトラックについての概要は省きます)

「処理の済んだボーカルトラックに対して空間系のエフェクトを付け足す」イメージです。


試したことがある人はわかるかもしれませんが、直接インサートしてしまうと"MIX(もしくはDry/Wet)"の値を下げないと「歌だけとても遠くで歌っている」みたいな変な感じになります。

そのやり方だと、リバーブの種類を選んだりかける量を決めるのにとてもやりづらく時間がかかります。さらにハモリやコーラスなどがあるとそのトラックも都度変えないといけません。(空間系プラグインは動作が重たいほうなのでPCの負荷も増えます)


なのでAUXトラックにひとつ立ち上げておけば、他に歌トラックがあったとしてもセンド(送る量)を変えるだけで済みます。ミックスの時間短縮にもなりますね。


というわけで、空間系はセンドで送るのをおすすめします。


前置きが長くなりましたが、ここから処理についてです。

まずリバーブに関しては、これもプラグインによって種類もパラメーターも本当に多岐にわたるので、まずはプリセットの中からイメージに近いものを選んでいきます。

合うものが選べたら、オケに対してどれくらいボーカルに付加するかを決めます。この辺は自分の好みによって変わりますが、オケをよく聴き、求められている距離感をしっかりイメージすることが大事かなと思います。

必要があれば、"Reverb Time"を変えてリバーブの長さをより曲に合うものにしてみてください。


オケの音量差が大きいアレンジだった場合は、メロとサビとでリバーブの量を変えるのもいいと思います。


次にディレイについてです。

ディレイはリバーブの処理の応用です。AUXトラックにセンドで送るのは同じですが、大きく分けて


1.ずっと送り続けてかけるもの

2.ピンポイントで送り追っかけて再生されるもの


と押さえておくとわかりやすいかもしれません。

これを曲によって使い分けていきます。


自分がよく使うやり方ですが、サビでステレオディレイをかけると空間が広がりメリハリがつきます。(例の設定がそれです)


ディレイで押さえておきたいパラメーターは、

●Delay Time(このプラグインは4分音符とかを選ぶと変わる)

●FBK(Feedbackのこと=繰り返しの値)

●LPF(ローパスフィルター=ハイカット)


このあたりは覚えておきたいです。

「なぜローパスフィルター?」と思うかもですが、ディレイの成分が元トラックと同じようにクリアに聴こえると少し不自然な感じになる気がします。現実のやまびこと同じように高域が減衰されるほうが「ディレイっぽい」ってことですね。あえて劣化させることで耳触りをよくするのは有効なテクニックの一つと言えます!



以上、ここまででミックスの基本的な流れを紹介してきました。

あくまでこれは「いろはの"い"」ですので、やっていくうちにもっとこだわりたいポイントがでてくると思います。


ボリュームをもっと細かく設定したいときはボリュームオートメーションを書いてさらにバランスを理想なものにしたり、

ハモリやコーラスがあればコンプ・EQの設定を変えたりリバーブの種類も変えたり、

反対にカラオケにEQをかけてボーカルの帯域を空けてあげたりもできます。


想定したよりもとても長くなってしまいましたが、ここまで読んでいただきありがとうございました。

これからミックスを始める人の参考になれば幸いです。


蒼井 (@aoi_blue_3 )

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